澤浩の奇術

Magic of Dr.Sawa
著者 宮中桂煥 東京堂出版
マジックファン待望の、世界的にも認められているDr.Sawaこと澤浩の初めてとなる独創的なオリジナル・マジック作品集。解説だけではなく奇術の考え方なども掲載。21種の作品以外にも、創作においての考え方やノウハウを解説し、さらには参考資料として、澤浩が発表した作品一覧や効果一覧も収録。一部レクチャーノートとして発表されている作品はあるものの、いままでに発表されていない作品がほとんどで、さらには、そのマジックの考え方なども含まれた貴重な内容です。演技のDVD付録付き。
(東京堂出版 内容説明より)
発売日前日の日曜日に書店に行ったら、数冊置いてあってであろう箇所に1冊だけありました。私が買って品切れ?今までにこんな事この静岡市の書店でありませんでした。凄い。
B5サイズ 200ページ、税込4935円。高い気がしますが、サイズが大きくて立派なハードカーバー、それにDVDも付いていますから迷わず購入。なんだか宝物を買った気分。
この本はいわゆるマジックのタネを解説している本とは違って、マジックの創作についての考え方や方法をテーマにしています。ですので内容として、
第1部 サンプルとして澤氏の21作品を紹介、解説
第2部 メソッド(澤浩の奇術の考え方)として、「理論奇術学」、「澤メソッドの心理分析」
「マジシャンと人間」
というカテゴリーに分かれています。

21種の「効果」を基に選ばれた作品で、いわゆる普通マジックに使用する道具であるトランプやコインなど以外のマジックが多く、これらから得られる果てしないイマジネーションの世界は半端なくおもしろいです。もう、アイデアに触れるだけでお腹いっぱい大満足状態。
本にはマジックの理論奇術学の要素として「現象」「素材」「時間」「プレゼンテーション」について書かれています。個人的に私は氏が使うマジックの素材が大好きです。型にはめず、自分の身の回りにあるすべての物を素材として用いています。本ではユニークな雑貨や物、アイデアグッズを使ったマジックを紹介していますが、氏がマジックに使用する素材は、本物の野菜やタンポポ、生き物などの自然物も含まれます。以前、テレビにご出演なさった時に演じていたプチトマトや、ヤドカリのマジックには本当に衝撃を受け、そのおもしろさに感激しました!
このブログをずっとご覧になって下さっている方は分かっていただけるかもしれませんが、私も面白いおもちゃ、グッズを見つけてはそれをマジックに使えないかなといつも考えています。
またハイキング好きなので、ドングリなど自然の物をテーマにしたマジックも色々創作しています。なるほど、だからなおさら私は氏のセンスに魅了されるんだと一人でしみじみと思った次第。
実演可能不可能は別としても、「こんな現象が起きたらおもしろいんじゃないか?」というアイデア力のある方に私は憧れます。素材を変え、見せ方を変え、今までにない新しい現象、面白さを生み出せたら素晴らしいのにといつも考えています。
氏のマジックの魅力のひとつは、プレゼンテーションの項目に書かれていますがその物語性。
コインの移動現象を行うのに、マットを海、コインを潜水艦に例え、その浮き沈みで表現したり、
ロープに結び目ができる現象を・・あ、言い過ぎるとつまらないので止めておきます。
これによってただの不思議な現象ではなく、意味のある魔法になっています。
偉そうな事を言って申し訳ないですが(たまには言わせて)最近はビジュアルさやテクニック優先で面白味がないマジックが多い気がします。意味がないというか、必然性がないというか、見ていてなぜそれをやりたいのか理解できなかったりします。例えば、スケッチブック、iPad、スマホから物が現物になって出てくるマジックがありますが、出てくれば「何でも」おもしろいですか?
この本にはDVDが付いていますが、「付録」というなんだか懐かしい言い方になっています。
内容はこの本の為に撮り下ろした映像ではなく、過去のコンベンションやホームビデオ(?)を集めた物です。見るとわかりますが、澤氏の自宅から始まって、なるほど確かに付録といった感じ。本で紹介されているマジックの実演は数点のみです。でも、貴重な映像が盛りだくさんで、私は大爆笑しながら観賞しました。結局、マジックは基より澤氏がユニークなんですよね。いつもニコニコ楽しそうで、「聞いてくれる?面白い話があってね~」」と世間話をしながらゆったりとマジックを演じるこの雰囲気、素敵です。言うまでもないですが、氏の作品は御本人が演じてこそのマジックなんですよね。いいなぁ、澤さん近所に住んでればいいのに。(笑)
巻末には参考資料として、発表作品一覧と、「効果」一覧という項目があり、作品のタイトルと現象が出典と共に書かれているのですが、これだけ読んでいてもめちゃくちゃ面白いです。入手できなかったテンヨーのブルークリスタルを使ったマジックをまとめた「ブルークリスタルブック」に記載の現象内容も書かれていて、それだけ読んでもそのイマジネーションに驚かされます。
というわけで、私好みのマジックやアイデア満載の素晴らしい本でした。奇術は楽しいな♪
"Reality can be beaten with enough imagination." - Mark Twain
<追記>
参考資料のページに漏れがたくさんあるようなので、私がわかる範囲で調べてみました。
手元に紙の資料がある物だけ記載してみました
● 販売されたグッズについて
日本語の商品名が抜けている物
・Sawa's Rope Lecture → Sawa's Lecture Note on Rope 沢浩氏のレクチャーノート
・Satan's Spoons → 「超能力スプーン」
・Space Changer → 「変身 火星人」
記載されていない物
・Napoleon's Not ナポレオンの結び玉 ・Pieces of Eight 金メダルの夢
・Paddle Bank 日本銀行のひみつ
ラビット社の商品ってまだまだあるらしい。
・ウェディングロープ 東京マジックのカタログに記載、メーカー不明
・SAWAGS(サワグス) ・SAWAGS(サワグス)U.S.A テンヨー
・フラッツレンダー ・ブレイク・ア・デック マジックランド
ネットで調べるとまだまだ見つかります。